カテゴリー 894 アフリカの諸言語

アフリカ諸語文法要覧 03 : バントゥ語群

読了。良い読み物だった。
残りはほとんどバントゥ語群に属する言語だった。
名詞クラスがどうやって発達したのかとか、この語族がなかったら多彩な名詞クラスがありうることを果たして想像できただろうかと思う。想像を巡らせて現実には存在しない言語の仕組みを作りたいものだ。


アフリカ諸語文法要覧 02 : ジュバ・アラビア語

ジュバ・アラビア語は南スーダンで話されている、複数のアフリカ諸語(ニジェール=コンゴ語族およびナイル=サハラ語族)とアラビア語の混成により生まれたクレオールである。
アラビア語に多い喉音・咽頭化音がなく、アフリカ語に多い声調の区別があるのが特徴的である。

この言語のTMA体系があまりにも綺麗な「典型的クレオール」の様相を呈していたのではっとした。

dúrubu「殴る」の時制・アスペクト・ムード

完了 ána dúrubu úwo. 「私は彼を殴った」
bi 未来 ána bi dúrubu úwo. 「私は彼を殴るだろう」
進行 ána gí dúrubu úwo. 「私は彼を殴っている」
kán 過去完了 ána kán dúrubu úwo. 「私は彼を殴り終わっていた」
kán bi 仮想現実 ána kán bi dúrubu úwo. 「私は彼を殴ればよかった」
kán gí 過去進行 ána kán gí dúrubu úwo. 「私は彼を殴っていた」

kánが先行性、biが非現実性、gíが非点性の標識と見れば一目瞭然である。並びもTMAの順になっている。この言語は1970年代に研究が始まったらしいが、Bickertonはこれも取り込んでバイオプログラム仮説を唱えたのだろうか。バリ語を始め基層言語の中にこれに近いTMAの体系を持つ言語は特段見当たらないのでTMAに関しては本当にバイオプログラムされているのかもしれない(…と思えれば原初語の方針が立つんだが)

ちなみに言語学大辞典では「アラビア語のピジン・クレオール」の項において他のクレオールとともに言及されている。


アフリカ諸語文法要覧 01 : 言語資料

クレオールの起源論の一つに、基層言語アプローチがあった。
多くのクレオールの特徴が類似しているのは、基層言語が共通しているからだ、という主張である。そしてその「共通の基層言語」として多く挙げられるのが、西アフリカの言語――具体的には、ニジェール・コンゴ語族の西クワ諸語である。それについて調べようとして本書に行き着いた。

本書はバントゥ諸語について充実しているものの、クワ語派として挙げられているのはアカン語のみであるし、統語についてはほんの数ページしか割かれていない。これだけではアカン語がクレオール的かどうかはよくわからない。もともとクレオールの起源を調べるために興味を持った本ではあるが、むしろ日本人がこのような書籍を編著しているところに注目すべきと思い直し他の言語も見てみることにした。


文法要覧というだけあって、どの言語も簡潔に音声、形態、統語に触れるだけとなっている。
それでも語学としてではなく言語を概観したいという向きには有用であろう(語学書の日本語を介した迂遠な説明に辟易しなくてすむ)。人工言語づくりの参考にするぐらいだったらこの程度の記述量が適している。もっともこの手の言語標本であればやはり英語圏の資料が充実しているのだが…。

と、ここまで書いて言語学大辞典ってどれくらいの記述量だったっけ?と気になったけどわざわざ図書館に出向くのも面倒なので買っておくことにした。参考になるだろう。


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