Indigo : レビュー

背景

2010年に半端マニアソフトより発売された同人ゲーム。同人ゲームオブザイヤー脚本賞1を受賞。スタッフは渡辺僚一秋雨前線などプロとしても活動している人が多数2。規模としては中~大3

タイトルは「藍色」、曖昧なものの象徴として作品中で幾度となく言及される。

舞台

現代日本舞台の伝奇系ファンタジー。バトル(刀剣・魔術・布)、ルーマニア神話、シルクロード史、進化論の要素あり。あらわし=現実の存在 とかくり=霊的な存在 に二分される世界観が独特4

主要モチーフは殺人。きっかけと方法は様々にしろ、殺人を志した人々が物語を織りなす。

総評

全体的に見て設定は面白いが、プロットに冗長・物足りない部分あり。会話テキストは好みが分かれるところで、自分としても評価に迷う。

印象としては良作と凡作の中間ぐらいの藍色な位置。つくとりがイメージに近い。

総論

物語は大きく分けて前編、番外編、後編の三編。前編で物語を提示し、後編で物語を修正しながら結末に向かうというのが大きな枠組。番外編では実際の歴史に架空の設定を織り交ぜつつ幽鬼たちの来歴が語られる。全編を通してこの部分が一番面白い。というのは短編として完成しているのはもちろん、本編の肝となる設定解説と伏線回収の役割を担っているためである。

前編が尻切れなのは仕方ないとして(いまいち後を引かないのは良くないが)、後編は最終盤で盛り上がるとはいえ、ある程度丁寧に前編をなぞる上に選択分岐が多く勢いを削いでしまっている。伏線も徐々にさり気なく爽やかに回収していくより、煽ってメリハリつけたほうが良いと思う。

登場人物の殺人の動機は以下のように多様である。殺人衝動を植え付けられた者(海保、スナップフォック)、本能として殺人を求める者(桜野、マボー)、復讐のために人を殺めるもの(小野瀬)、戦場に死に場所を求める者(西居)、人を救うために戦う者(カスパール)、己の信念のために戦う者(バルタザール)。またネクラートや蝶は人類を滅ぼすことを画策している。

桜野とマボーは同様に本能として殺人を求めるが、一方的な殺人を理想とする桜野と対等な力比べを望むマボーは好対照。しかし最終的に、頑なに爽やかな殺人を志向し泥臭い戦いを嫌っていた桜野がカスパールの命懸けの教え(戦いとは対話であるということ)を理解し受け入れるシーンは感慨深く、本作屈指の名シーンとなっている。

バルタザールの信念は「人の魂を踏み躙る輩を許さない」。バルタザールの過去は番外編で語られるが、後のバルタザールであるアズラカラクの王子クゥトは脇役(せいぜい敵役)でありいまいち描写が薄く、幽鬼化と千年の時間で変容したにしても彼の心情と立場は理解し難い。このあたりにもう少しフォローがあると良かった。

実はループものだが、ループ要素は単なる選択肢分岐の説明係であり実質的には不要。プレイヤーの視点は「ヒラニヤガルバ」と呼ばれ、惨劇の予兆、そしてループの起点とされる。物語の後半ではループの起点から絡み合う3つの視点を自力で巡り、ハッピーエンドに到達するようにキャラクターの行動を選択していく。

プレイヤーの選択によりループの脱出を目指すというやり方はADVとしては王道5であり、ADVならではの構造である。マルチ視点もADVらしい(特有ではないとはいえ)。しかしIndigoの場合これを組み合わせることで同じシーンを3~4回繰り返すという惨事を引き起こしている。この点は本作で最も残念な点である。ループもの共通の欠点だが、異なる展開を見せるなど手間を掛ければ避ける方法が無いわけではない。そもそもこのゲームはループ物にする必要が感じられないので採用した時点で失策であろう。

物語は争っていた幽鬼同士の消滅、さらに殺人鬼(殺人衝動)の弱体化で解決し、カップルたちは結ばれ、一応のハッピーエンドを見せる。一番応援したいのはやっぱり末川針子の恋だろう。開幕当初から一片のブレもないべた惚れっぷりに拍手。

余滴

その他の要素に特筆すべき点は見当たらない。同人ゆえにボイスがないことぐらいだろうか。

個人的なトピックスとしては、蒼樹うめが非ぺちゃ顔を描いてるのを初めて見た。可愛い。


  1. 権威のほどは不明だが、同賞を受賞したファタモルガーナの館を直前にプレイしていて良作だったため受賞作を参照し、気になった今作を購入。
  2. ただし私自身は大半のスタッフを本作で知った。
  3. プレイ時間30時間前後。
  4. 同サークルの前作との設定の繋がりがあるらしい。
  5. CROSS†CHANNELが好例。
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